CD / If You Were Closer

横山 起朗 Tatsuro Yokoyama

CD / If You Were Closer
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大切な誰かを想う時間を綴った
黄昏を思わせる切なくも暖かい横山達朗のピアノ作品集。

「夕暮れ時に海岸を歩くと
 逢いたい人の姿が浮かび、
 思わずメッセージを送ろうと思った。
 しかし逢わない時間を慈しむことも
 大切ではないかと考え、
 その想いのままピアノに向かい続けた」

クラシック音楽(ブラームス/マグダウェル/レスピーギ)の作品も収録されています。

<トラックリスト>
1.sundown
2.perfume
3.her book
4.timeline Ⅰ
5.half full
6.reminisce
7.timeline Ⅱ
8.first song
9.stand still
10.intermezzo in A Major Op.118, No2
11.finger
12.to a wild rose
13.as you
14.some lies
15.sunshade -not her fault-
16.dust fell
17.timeline Ⅲ
18.barcarolle
19.ours
20.siciliana -coda-

品名
CD / If You Were Closer
価格
作家
横山 起朗
サイズ
W136×D136×H6mm
  • CDを購入する場合、レターパックライト(370円)がご利用いただけます。(CD4枚まで)

武蔵野音楽大学を卒業後、ポーランド国立ショパン音楽大学にてピアノを学ぶ。現在は宮崎、東京、ポーランドを拠点に演奏活動を行い CM やテレビ番組等へ楽曲の制作をするなど、幅広く活動する。 また2020年よりMRTラジオにて静かな音楽を紹介する 「be quiet -世界で一番静かなラジオ」のパーソナリティを務めている。

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「あたらしいピアノに触れる瞬間」   ピアニスト・作曲家  横山起朗  前編

「あたらしいピアノに触れる瞬間」 ピアニスト・作曲家 横山起朗 前編

「あたらしいピアノに触れる瞬間」 ピアニスト・作曲家 横山起朗 前編

Interview

作り手が、何を想い、どのように制作しているのか、背景なども合わせて紹介していくシリーズ。
第1回は、ピアニスト・作曲家の横山起朗さんです。

私が、初めて横山さんの音楽を聴いたのは、約1年半前の福岡県大牟田市にあるカフェでした。
音楽のとらえ方も、人それぞれでしょう。その時に、流れていたアルバムの「she was the sea」からは、もの悲しさと心細さと何とも言えない気持ちになったことを覚えています。何を想いながら作曲しているのか、その原点は何なのか、いつかお尋ねしたい思っていました。それから念願が叶い、曲のこと、大切にしていること、その他の活動などについてインタビューしています。 (聞き手:店主 末永)

 

横山起朗 / Tatsuro Yokoyama
武蔵野音楽大学を卒業した後、ポーランド国立ショパン音楽大学にてピアノを学ぶ。現在は宮崎、東京、ポーランドを拠点に演奏活動を行い、CM やテレビ番組等へ楽曲の制作、「nuun」のグループ活動、MRTラジオ「be quiet 世界で一番静かなラジオ」のパーソナリティをつとめるなど、日本と海外を行き来し幅広く活動している。

 

クラシック音楽から
しつらえる音楽へ


学生時代の専攻はクラシック音楽だったのですか?

 

横山
元々はクラシック専攻ですね。祖父の影響で小さい頃からクラシックを始めて、武蔵野音大でクラシックを学び、ショパン音大でもクラシックを学んでいました。


現在、活動されている横山さんの音楽は、クラシックと呼ばれるジャンルではないと思うのですが、ジャンルを教えてもらえますか?

 

横山
ポストクラシカルと言われる流れの中でも、ちょっとピアノにより近い表現をしている音楽って感じですね。もともと、大まかにクラシックとジャズの2つしかなかったんですけど、CDショップとか並んでいる棚を見ると、最近はその真ん中ぐらいのポストクラシカルとか言い方をするくくりに入れられている感じがありますね。あんまり意識をしたことはないです。聴いてもらったら一番わかりやすいと思います。



音楽って一番伝わりやすい手段だと思うんです。流れていれば、自然と耳に入ってくるし。簡単なようで難しいと思うのですが、伝えることへのこだわりはありますか?


横山
音楽の種類にもよりますが、ピアノソロの場合、割と静かなものが多いので、そういう空間をしつらえて届けるっていう。だから、聴いている環境と音楽がマッチするように意識をしているかもしれないですね。今でこそ間接照明を立ててライブをすることは普通なんですけど、ちょっと前まで、僕の知っている限りはそんなことをしている方は少なかったんですよ。


そうなんですね。確かに昨年10月に伺ったサル・マンジャー(宮崎市)での演奏会では、間接照明のなかで演奏されていましたね。


横山
最近、そういう環境で演奏する方が増えたような印象がありますね。僕がクラシックの世界にいたせいもありますが、やっぱり照明をしっかりと当てて、演奏者の姿がよく見えていました。照明を落として、顔よりもその音に集中できる環境を作って届けるみたいなものを大事にしたいと思っています。



しっかり照明が当たると、演奏者だけに目が行きがちで、照明を落とすと落ち着きますし、小さな音にも集中して聴けそうです。


横山
スタンダードも大事で、しっかりと照明をたいて普通のピアノコンサートを催すときもあるけど、でも自分の曲を届けるときって届け方がすごく大事かなと思っています。フライヤーの段階からもその予告編になるようにデザイナーさんにお願いをして、そういうことを結構大事にしています。映画の予告みたいなものがすごく好きなんです。予告編とか、そういうところから着想を得るというか、コンサートが楽しみになるものがあったらいいなという話をしますね。それは、僕だけのアイディアじゃなくて映像作家さんなどのプロの方の意見を聞きながら作っています。

※2023年3月5日に宮崎市で開催されたコンサート「noc polarna」のフライヤー。 デザイン:山口明宏

 

CDを作り続けること


最近では音楽もサブスクが主流になっていますが、現在でもCDを制作されていますよね。そのなかで、CDを作り続ける理由は何ですか?


横山
いろいろあるんですけど、音質も理由のひとつです。あとは手に触れることが自分自身も好きなのも大きいし、さっきの予告編じゃないけど音楽って標題音楽と絶対音楽と呼ばれるものがあって、絶対音楽は音楽だけでその世界を作っていく。例えば、ベートーヴェンのコンチェルトみたいにその音を聴いて、何か景色が浮かんだり、何かが見えたりします。標題音楽は、最初からテーマが海だと、海をイメージして作っていく。僕は標題音楽が今は好きで、その延長線上になると映像や写真、デザインなどがものすごく必要に感じるところがあって、そういう意味合いでもやっぱりCDっていう形がすごくしっくりくるなと思っています。あとやっぱり僕がCDで育った世代というのも大きいですよね。

 


CDで育った世代なんですね。


横山
レンタルショップもCDだったし、短冊形のパッケージに入ったCDもありましたね。



それは、シングルCDですね。


横山
ぎりぎりみたことがあります。初めて買ったのもCDだったし。あと、CDのいいところは、クレジットが掲載できることですね。つまりバンドの音楽とかってバンド名だけで、サブスクではそのサポートミュージシャンの名前まで出ないんですよ。今はちょっと書けるかもしれませんが。CDは、マスタリングした人やデザイナーの名前も全部書けます。音楽って最終的には一人で作っていないので、クレジットが載っている方が、自分の中ですごく納得できます。

※マスタリングとは、音楽やゲームなどの素材をCDやDVDなどの記録媒体に収録するための最終工程で、音量や音質を調整してマスター(原盤)を作成する作業のこと。

※「find/nuun」 のアルバムジャケットより

 

あたらしいピアノに触れる瞬間


モノづくりをする方たちが何を大切にしてモノづくりをしているのか気になります。音楽を生み出すために何か大切にしていることはありますか?


横山
曲を作るとき、あんまり僕は景色を見たりして曲が浮かぶっていうのはないんです。ピアノの前に座って即興的に弾くところから始まっていきます。最初、即興でさっと弾いて、それにメロディーがちょっとできて、それを膨らませていくみたいな作り方が多いんですね。新しいピアノに触れる瞬間をすごく大事にしています。



新しいピアノというと?


横山
いつも家で弾いているピアノじゃなくて、買ったピアノって意味でもなくて、各会場にあるピアノに触れる最初の瞬間。例えばどこかのホールや、行く予定の場所、カフェにあるピアノなど、初めてのピアノに触れるときに浮かぶっていうか、それぞれ音が違うんですよね。ピアノはピアノですが、響きや癖とか、厳密には違います。そういうときって感覚的な刺激がすごくあるんですよね。



なるほど。ピアノと対話している感じですね。


横山
その瞬間を感覚的に大事にしていますね。あと楽曲を作る知性として、クラシック曲などを聴いて紐解いて研究することもあります。だから、感覚だけでは作れないんですよ。多少、頭で使うところを求めてしまうところもちょっとありますね。

 

(インタービュー当日、ファーストアルバムの「solo piano 01:61」を流していました)


懐かしいですね。この曲は、最初のCDで7、8年前に作ったと思います。今は、
「she was the sea」がいろんなところで流れていることが多いかもしれません。ファーストアルバムは、その当時に一生懸命頑張って作っている感じが伝わってくるんです。

 

5/26 Fri. 公開予定
「今につながる音楽」 / ピアニスト・作曲家 横山起朗

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Interview

作り手が、何を想い、どのように制作しているのか、背景なども合わせてご紹介していくシリーズ。
第1回は、ピアニスト・作曲家の横山起朗さんです。

私が、初めて横山さんの音楽を聴いたのは、約1年半前の福岡県大牟田市にあるカフェでした。
音楽のとらえ方も、人それぞれでしょう。その時に、流れていたCDアルバムの「she was the sea」からは、もの悲しさと心細さと何ともいえない気持ちになったことを覚えています。何を想いながら作曲しているのか、その原点は何なのか、いつかお尋ねしたい思っていました。それから念願が叶い、曲のこと、大切にしていること、その他の活動などをインタビューしています。 (聞き手:店主 末永)

 

横山起朗 / Tatsuro Yokoyama
武蔵野音楽大学を卒業した後、ポーランド国立ショパン音楽大学にてピアノを学ぶ。現在は宮崎、東京、ポーランドを拠点に演奏活動を行い、CM やテレビ番組等へ楽曲の制作、「nuun」のグループ活動、MRTラジオ「be quiet 世界で一番静かなラジオ」のパーソナリティをつとめるなど、日本 と海外を行き来し幅広く活動している。

 

正解がない音楽と未來


横山さんは、ピアノに限らず、ラジオのパーソナリティ、文筆、グループ活動など、幅広く活動されていますよね。多才だなって思います。

 

横山
好きだったアーティストがいろんな表現をする方が多かったんです。フランスのボリス・ヴィアンやセルジュ・ゲンスブールとか。音楽家でありながら小説を書いたり、絵を描いたり、詩を描いたり、そういう方に密かに憧れていました。

日本だと池田満寿夫さんみたいな方ですね。まず一つ自分の表現を確立していて、プラス何か他の表現もできる。ある意味、他のプロフェッショナルと戦うとしたら、技術的には劣っているかもしれませんが、その人独特の世界観が見える。技術によって隠されてない、その人の何かが見える。本業からちょっと横にそれた表現の方法もいいなと。

こういう曲をかいているけど、文章になるとこんなふうになるみたいな。文章の方がその人といるような気分になるなとか、そういうのが面白いと思ったんです。そんなことを考え始めて、スタンダードな位置から道を反れはじめましたね(笑)

 


そんなことを考えていらっしゃったのですね。


横山

ポーランドに行った時も東京にいた時も、やっぱりすごい人たちがいっぱいいたので、何か自分なりの何かがないと、と思いました。今はそんなことを思わないけれど、20代のときって人と比べちゃいますよね。

 


わかります。多分、横山さんが経験を重ねてきたからではないですか?

 

横山
そうですね。劣等感までいかないけど、自分には何があるんだろうっていうのをすごく探しましたね。ベートーヴェンの曲はみんなが知っているけど、自分の曲だと知っている人は少なくなるけど好きで聴いてくれているオリジナルを作れたらと今はそう思っています。

 


ポーランドから戻られたのは、5年前ですよね。

 

横山
5年経ちますね。



それを20代後半で確立されたのはすごいなって思います。

 

横山
何が正解かわかんないですよね。自分がいいと思ったら人からはいい反応がなかったり、こっちがあまりよくないと思っても人からはいい反応があったり。

 


音楽も、物事の見方も、人によって意見が違いますからね。

 

横山
音楽は、そこが魅力かなって思います。クラシックは、コンクールに出ても、1、2、3位っていう順位がついちゃうし、究極、クラシックの作者は亡くなっているから正解はないはずだけど、正解を求めちゃうんです。音楽だと正解や不正解みたいな答えみたいなものはないですね。僕も含めて、勘違いして答えがあるってみんな思っているんです。

 


たまに阿部海太郎さんやharuka nakamura さんの音楽も聴きますがお二人とも違いますし、横山さん独特の世界があるなと思います。

 

横山
いやいや、まだまだです。比べるじゃないけど、作曲をはじめて人前で演奏するようになったとき、いろんな音楽家の表現の仕方を見ました。坂本龍一さんや、haruka nakamuraさん、阿部海太郎さんの音楽を聴いていろいろ考えたけど、結局は自分のやりたいことをやればいいだけです。

最初は手探りでした。文章を書いたときに失敗したときもあったし、音楽をやっているときも違うなと思うときもあったんです。



横山さんの音楽って、夕暮れから朝方までの時間のうつろう感じ、夜に聴く感じの音楽かなと感じています。だから、ドライブ中に聴くと眠くなる、、、みたいな(笑)

 

横山
そうだと思います。なんかね、自然とそうなりましたね。でも夜に作っているわけじゃないんです。夜にピアノを弾くときもあるのですが、夕食の時にお酒を飲むとちゃんと弾けないので、朝から曲を作りますね。夜の方がなんかしっくりくるなって確かにあります。

 


てっきり夜に作曲しているのかと思っていました。初めて私が聞いたのが、アルバムの「she was the sea」で印象的でした。

 

横山
「she was the sea」 が、出発点みたいなものです。その前は全部自分1人でやっていたので、人が関わって制作した大事な作品になったのでうれしいです。どこで聴かれたんですか?


福岡県大牟田市にある「cafe nei」というカフェで流れていて、思わず誰の曲かお店の方に訊ねました。宮崎在住の横山起朗さんのCDですよって教えてもらったんです。

 

横山
流してもらえるのは嬉しいですね。あれはポーランドで録音をしたんです。
ビドウシュチという街の古いホールで、響きが素晴らしいところでマイクも10本以上立てたと思います。外には駐車場があるのですが、誰かが車を停めないように録音中の管理も徹底していました。さらにグランドピアノが4台あって、好きなピアノを選んで弾けるなんて夢のような施設なんです。会場費も日本に比べて安かったですね。古いグランドピアノを選んで、前日から当日までずっと調律師がついて、何かある度に全部チェックしてくれました。照明もほとんど落として、落ち着いた環境で録音させてもらいましたね。「she was the sea」の曲は結構激しくて、少しの灯りだと間違えてしまうことがあって、灯りをつけたらいいじゃんとか言われながら、それでも灯りを増やさずに録音しました。それもいい思い出ですね(笑)


今後の活動でやりたいことはありますか?


横山

海外とかで演奏する時間も増やしたいです。県外もですけど、ヨーロッパにも行きたいですね。

 


いいですね。


横山

ポーランドには友達もいて3年ぐらい行けていないので訪れたいですね。あと音楽もピアノを中心にすることは変わらないですけど、それを用いていろんな表現ができたらいいと思います。ピアノっていうのはぶれないでしょう。

 

宮崎に拠点を置くこと


今はどこでも活動できる時代になってきましたが、現在も宮崎にも活動拠点を作っている理由を教えてもらえませんか。

 

横山
正直深く考えてなかったんですけど、東京に7年間いて、その後ポーランドに3年間留学して、10年くらい宮崎にいなかったから、そろそろ帰りたいなって気持ちと、海や気候に惹かれるようになったんです。特にポーランドは寒かったし、ワルシャワだったから近くに海もなかったんですよ。だから自然と地元へ戻ろうかなと。あと東京でもいいと思ったんですが長いこといたので、漠然と東京じゃないところがいいなと思っていました。落ち着いたところで曲作りをしたかったですね。

 


確かに東京で曲を作るのと、宮崎で作るのは、違ってきそうですね。

 

横山
全然、時間の流れが違いますね。宮崎で1時間はすごく遠く感じるけど、東京の1時間はそんなに遠くないですもんね。電車で30分とか近いじゃんってみんな言うし。あとは僕を含め、周りもそうだったけど、東京で暮らしているとすごい人によく出会うんですよ。例えば、ピアノで有名な方の手伝いをするとか、その方の付き人になるとか、とにかく今まで憧れた人に結構会えるんですよね。そうするとやる気にもなる反面、自分がすごいって錯覚を覚えちゃうんです。その人と仕事している俺すごいみたいな、それが僕はちょっと嫌だなって思った時期がありました。宮崎にいれば誰も知らないんですよね。引っ張ってくれる人はいませんから。日本っていうくくりで見た場合、ちゃんと動いた分、何かしらの成果も得られるけど、動かないと逆に何もおきないという自分の危機感をちゃんと煽れるっていうのも考えていました。

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「今につながる音楽」 / ピアニスト・作曲家 横山起朗  後編

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作り手が、何を想い、どのように制作しているのか、背景なども合わせてご紹介していくシリーズ。
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私が、初めて横山さんの音楽を聴いたのは、約1年半前の福岡県大牟田市にあるカフェでした。
音楽のとらえ方も、人それぞれでしょう。その時に、流れていたCDアルバムの「she was the sea」からは、もの悲しさと心細さと何とも言えない感覚になったことを覚えています。何を想いながら作曲しているのか、その原点は何なのか、いつかお尋ねしたい思っていました。それから念願が叶い、曲のこと、大切にしていること、その他の活動などをインタビューしています。 (聞き手:店主 末永)

 

横山起朗 / Tatsuro Yokoyama
武蔵野音楽大学を卒業した後、ポーランド国立ショパン音楽大学にてピアノを学ぶ。現在は宮崎、東京、ポーランドを拠点に演奏活動を行い、CM やテレビ番組等へ楽曲の制作、「nuun」のグループ活動、MRTラジオ「be quiet世界で一番静かなラジオ」のパーソナリティをつとめるなど、日本と海外を行き来し幅広く活動している。

 

「If You Were Closer」 と「find」


横山
現在、手元にあるCDの在庫は個人活動の「If You Were Closer/Tatsuro Yokoyama」 と、グループ活動の「find/nuun」だけになりました。 

これは4作目のCDの「If You Were Closer」 というタイトルで、「あなたが近くにいたらいいのに」という意味があります。その通りポーランドと日本の行き来が簡単にできなくなった時期に、電話すれば話せるしテレビ電話もできるけど、一旦気持ちを抑えてそういう気持ちを持ったままピアノに向かってみたらどういうものが作れるかなと思って、これは割と感情で作ったような曲集ですね。

もうひとつの裏テーマとしては夕暮れの時間の黄昏どきみたいなものをテーマにしていて、変な例えですけど昼と夜の間に夕暮れがあって、その時間があるがゆえに、こことここが会えないっていう感じ。昼間を会いたいひとに見立て、夜を自分に見立て、会えない時間が夕暮れ時だって言うということで、そういうこともちょっと入れたような曲が入っていて20曲ぐらい収録しています。でも短い曲も多いんですけどね。「she was the sea」よりも若干その音楽の温度というか体温がちょっと高め。あっちがすごく寂しい感じだったら、こちらは割と温かみのある感じで作りました。作曲したものと即興のものも候補に入れていて、かつ自分の中で新しい取り組みだったのはクラシックの曲を入れています。



そうなんですね。

横山
「If  You  Were  Closer」の中には、ヨハネス・ブラームスのインテルメッツォという曲があるんですけど、インテルメッツォの118を入れたのと、その下のエドワード・マグダウェルというアメリカの作曲家が作った 「to a wild rose」という野ばらのローズという曲と最後のオットリーノ・レスピーギという作曲家のシチリアーナのコーダって書いているものがあって、これらを組み入れたのも自分のなかで新しいことでしたね。
「barcarolle(バルカロール)」という曲が一番このアルバムの核になっている曲で、「舟歌」っていう意味があります。「舟歌」って8分の6拍子ですが、それを4分の4にして作っている曲で、波の上をたゆたうようなイメージがあります。元々、船乗りとかが歌っていたような歌の一節だったんですけど、そういう感じというより、海にちなんでいる音楽という意味合いでちょっと入れました。

 

横山
英語だとバルカロール、フランス語だとバルカローレで、語尾の発音が違います。チャイコフスキーもバルカローレという曲を作っていて、演歌の曲もありますよね。

 


八代亜紀さんですね。

 

横山
バルカロールってあまりなじみのない言葉ですけど、「sunshade(サンシェード)」という曲があって、これに関してはピアノで入れた上にピアノを重ねて録音しています。RE:CONECTという和楽器とともに演奏している曲が入っているんですけど、それは琴とピアノのために作った曲なんです。そういうのはピアノ2台でアレンジしたという長めの曲ですね。



曲の説明をしていただきましたが、ジャケットの写真も気になります。

 

横山
デザインやジャケットは、グンジキナミさんがやってくれました。
モデルさんがいて、このジャケットの写真も好きなんです。他にも、女性が寝転がっていたり、窓の外を眺めていたり、他のショットもあったのですが、なぜか、この写真が個人的に気に入って決めました。いろんな解釈ができるなと思います。座ろうとしているのか、奥に人がいるのか、何かを見ているのか。結構気に入っていますね。

 


グンジさんとは、音楽と映像を制作するグループの『nuun(ヌーン)』 を組まれていますよね。

 

横山
『nuun』の音楽は、いわゆるエレクトロニクスですね。「find」には、写真が2枚入っています。長い写真が1枚と、収録曲が記載されているものが1枚。どちらもグンジさんが撮ったもので、写真もランダムで入っているんです。

※『nuun』・・・作曲家・ピアニストの横山起朗、電子音楽作曲家の玉利空海、写真家のグンジキナミの3人によるグループ。「過ぎてしまう一瞬を見つめる」をテーマに音楽と映像で作品を制作する。


面白いですね。

 

横山
写真が5、6種類あって、手に取ったときしかわからない状態になってます。findっていうCDタイトルがついているんですけど、1曲目のfind という曲は、玉利くんとグンジくんと僕の3人で作った最初の曲がfind というタイトルだったんです。『nuun』 自体のコンセプトが、「過ぎていく時間をみつめる、みつめなおす」をテーマにしています。エレクトロ二クスのビートのある曲が多いので、音楽に速度感があるんですよね。割と早く過ぎていく感じが僕はそう感じるんです。そういうものを映像と音楽とともに何か捉えていくみたいなものをテーマにしています。
find っていうタイトルは、詩人のランボーかな。「見つけた、何に永遠を、それは二つの海と太陽の番だみたいな、繋ぐ番だ」という意味があって、そういう永遠じゃないけど、時間をテーマにしているんで、そういうものを永遠と見立てて、そういうタイトルを一番最初にもってきました。
全部で7曲入っていて、she was the sea という僕の曲をアレンジしたものと、宮崎を中心に活動しているギタリストの日高勝久さんと、和田玲くんというボーカルが、フィーチャリングで2曲入ってくれているので、それも素敵なので聞いてもらえると嬉しいですね。

 


いいですね。

 

横山
気分をあげたいときに聴いた方がいいかな。でも全体的には激しくなくて、しっかりビートが効いていると思います。『nuun』のライブは一旦休憩になっちゃいますが、曲作りはしていきます。

 


落ち着いたトーンの横山さん個人のピアノと、ビートの効いた『nuun』は、トーンが違うのでちょっとびっくりしました。私にとって、演歌歌手がヒップホップ音楽を歌うような感覚くらい違うものなのかなと思います。

 

横山
僕の中では、延長線上なんですけどね。奇をてらったことをしようというよりかは元々好きだったものが展開しているだけなんです。

 

今につながる
これまでのこと


今までお話をお聞きしてきましたが、丁寧に言葉を選んでいる感じがして、音楽にも通じている気がします。

 

横山
性格かな。やっぱり音楽のときは特に言葉を選びますね。普通のときより、慎重に考えてしまうようになりました。だから昔はよくも悪くも真剣じゃなかったんだと思うんですよね。だってピアノでお金をいただくっていう発想はなかったですから。最初にピアノを弾き始めたのは習い事だったんで。だから勉強と一緒ですよね。普通は趣味になっていくものが仕事に変わっていきました。
分岐点が明確にはなくて、遊びの延長線上っていう意識ぐらいしかなかったんです。でも、いつの間にかそれが大事なものになって、そうなると慎重になるところも出てくるのかな。だから遊び心みたいなものも逆に求めてしまうのかもしれないですね。

※文芸誌「文学と汗」・・・2020年8月創刊。多くの人が文学に親しめる土壌作りを目的として、音楽家・学生・飲食店経営・劇作家・ライター・デザイナーなどが執筆。品ジャンルも垣根なく、小説・エッセイ・詩歌・漫画・絵本など、バラエティに富んでいる。


言葉といい、グンジキナミさんが編集長を務める、文芸誌の「文学と汗」に寄稿されていますよね。そういったお仕事も経験されていたんですか?

 

横山
バーの仕事と、それと僕のおじがライターの仕事していたんで、ご厚意というか何か文章を書かせてもらうこともありました。その他には、学生の演劇の作曲や、ピアノの伴奏の仕事、ベルギービール屋でも働いていろいろ経験しましたね。



何かしら今に繋がる何かを経験されていますよね。

 

横山
結果的には。

 


作曲も文筆も。


横山
ちょっとだけ小説家とかになりたいなとか思った時期もありましたね。でも、最近思うのは、好きなことより得意なことを極めた方がいいです。小説は好きでしたけど、得意ではなくて苦労しました。文筆は苦労も耐えられない苦労だったから、音楽は苦労するけど耐えられる苦労だし、どちらかというと音楽の方が得意なことだったので、得意なことをした方がいいんだなと。



丁寧に言葉を選びお話する横山さんからは、これまでの経験の厚みを感じました。深みのある音楽が生まれた理由がわかった気がします。これから何かを目指す人にも読んでもらえたらいいですね。これからの活動も楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 

・・・・・・・・・・・・・

2023.5.12 release
「quiet new」 Tatsuro Yokoyama

去っていくピアノの残響を
両の手でゆっくり掬い上げるように。

ひとつひとつの音がうつくしい曲集です。
視聴はこちらから。

 

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