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「陽につたう」 押し花 小森 インタビュー

本当に野生で儚いんですけど、その儚さをちょっとでも長く、キレイな状態で見てもらいたい。

 

<押し花 小森 / 押し花>
大阪と鹿児島、宮崎の生花店での経験を経て転向。
押し花にした植物の姿に虜になり、一輪・一種の美しさを活かした作品を制作しています。

 

ーー押し花の制作は、いつ頃からスタートしたのでしょう。

 

生花店で15年くらい勤めて、そこから押し花の勉強を始めました。 2020年から現在の仕事を始めてるので、その2年前、2018年くらいですね。だいたい2年弱ほど教室に通って。

初めは市場で仕入れた植物を押し花にしてたんですよね。でも周りにいる方たちの影響がちょっとずつ自分の中に入ってきて、野草を使うようになって。一緒にお仕事した方や、出会った方が、例えば農業してたりとか。お庭で植物たくさん育てられたりとか。そういった影響はとても大きかったと思います。

 

 

ーー生花店で働かれてらっしゃったんですね。小さい頃からの夢だったり?

 

あ、でも短大に行く前は美容師になりたかったんです。美容師さんへの憧れはすごいありました。でも母親にすごく反対されたんですよ。その反対を押し切って美容の専門学校に行く勇気が、その時の私にはなくって。やりたいことは色々あったんですが、結局は短大に行きました。そのあと落ち着いて考えてみて、やっぱり自分がしたいことをしよう! と。そこで見つかった目標が花屋さん。

 

 

ーーもともとお花が好きだったんですか?

 

叔母さんが東京で花屋さんをしてるんです。なので、その憧れもありました。ちょうどその時に花屋さんのブームもあって、雑誌などでよく見るようになって。いろんな本や雑誌を買って情報を得て、まず大阪へ行きました。

都会の花屋さんで働きたい、という理由で大阪へ行ったんですよ。行ったんですけど、やっぱりその時は未経験者だったので履歴書を持って行く勇気がなくて。勉強しながらやってみようとなって、それでたぶん2〜3年ですかね、スクールに通いました。

大阪では3年半働いたんですが、最後はハードワークに疲れてしまって。ちょっと鬱っぽくなってしまったんですよね。仕事量もきっと自分の容量を越えてたんだと思います。

 

ーーオーバーワークだったんですね。

 

ちょうど30才くらいの時だったんですよね。30才だし、帰ろう、という一区切りのつもりで実家のある鹿児島へ戻りました。そこから長かったですね、7年間、また花屋さんで働きました。

 

 

ーー鹿児島での勤務は楽しかったですか?

 

楽しかったですね。柔軟というか、ミスをしてもこう対処すればいい、ということを学ばせてくれた環境でした。仕事の内容的には責任感を伴うものが多くなったのですが、その分、達成感につながっていました。

 

 

ーーお花屋さんサクセスストーリーですね。しかし現在、なぜ宮崎に?

 

鹿児島から宮崎へのきっかけは、結婚です。宮崎の人と出会ったんですね。移住してもやっぱり生花店で働こうと思って、最初は花屋さんで働いていましたね。そして2020年から、押し花一本になりました。

 

 

ーーでも小森さんのすごいところは、自分に合う方向を自分で決定してきた、というところですよね。

 

ライフプランじゃないですけど、押し花に転向したのも、まず長く続けたい仕事であること。それにたくさんの人と働く環境が得意なのかっていうと、得意じゃないと。あとは、自分ひとりで没頭することの方が好きだとか……そうやって「これだったら私、できるかもな」を選んでいって、自分は押し花を学んでいったら合ってるのかもなと。

 

 

ーーなるほど。では、その押し花制作についても伺いたいです。どのような感覚で、あの画面構成というか、ひとつの作品として形を決定するのでしょうか?

 

まず用紙のサイズは決まってるので、その中で枝をどう活かそうか考えます。量があるものはまずいっぱい押して、その中でいいものを選別する。枝取りが良ければ、ここからここまで押し花にしよう、って思ったりもします。いろんなパターンがありますね。

でもやっぱり、植物の向きですかね。これだ、と思う角度がそれぞれの植物で出てくるんですね、ぺったんこになったところから。そこから可愛さを引き出すというか……どの角度にしてあげるとよりキレイに見えるか、引き立つか、というところを見つけて貼ってあげる。

 

 

ーーその子の1番良い角度を見つけてあげるってことですね。なかなか大変そうですね。マニュアルがあるわけじゃない、正解があるわけじゃない。

 

そうなんですよね。でもクリエイティブなお仕事全部そうですもんね。

皆さん、だからずっとやれるんでしょう。

 


ーー普段どういった押し花の依頼があるんでしょうか。

 

そうですね、結婚式が多いですね。結婚式やプロポーズの依頼が7〜8割。あとはお誕生日の方が偶にいらっしゃいます。あ、でもこの前は、ラナンキュラスのラックスという品種を研究された方へ、そのお花を使ったプレゼントがしたいと。そういう依頼って本当、光栄なことですよね。

 

 

ーーお仕事で制作される時は、クライアントさんの思いを汲み取りつつ?

 

汲み取りつつ、プラス自分の思いじゃないですけど……私は、全部残せばいい、と思っていないんです。それがうちのコンセプトというか、お客様にもきちんとお伝えして。なので額のサイズも大きくしてないんですね。

あとは、貰ったものとまったく同じ形にしなくてもいいと思ってるんですよね。同じ形じゃなくて、散らばらせたりとか。後々になっても長く見てもらえる、飽きないような押し花の提案をしているつもりです。シンプルに見ていただけるものというか。

 

 

ーーもはやデザインの提案をされてるんですね。生花店の経験をずっと何年もされてきたから、このお花のどこが美しいのかをわかってらっしゃって、1番の美しいポイントを押し花として残してらっしゃるんですね。一方で、ご自身の作品としての押し花は、どんな風に選ばれるんでしょうか。

 

私は珍しいものとかじゃなくて、やっぱり自分の中で「あ、これ押し花にしたときになんか絵になるな」「これは色が抜けた時に姿がキレイだな」という観点で。

全然知らない植物がまだまだいっぱいあるので、今ちょっとずつ勉強しつつ。それでまた世界が広がってる感じですね。この植物を、押し花にするとこうなるのかって。皆さんにそう思ってもらいたいなと。本当に野生で儚いんですけど、その儚さをちょっとでも長く、キレイな状態で見てもらいたい。

野草は紙に貼ってるんですね。紙に貼っているものは、本当にもうシンプルに貼ってるだけなので、空気に触れることで色が変化していきます。反対に、額装のものは空気を抜いて保存するんですよ。それは紫外線の当たらないところに飾ると、色がそのまま保たれるんですね。なので額装で中に入れる植物と紙に貼る植物は、自分の中で分けて。額装の作品にするのは華やかなものとか、花屋さんで売ってるようなもの。紙に貼るものは色が褪せてもキレイであろう、というもの。そういった区別をしています。

 

ーー故郷に対しての思いを、今回のインタビューでは聞いてて。小森さんはあちこち移住されてらっしゃいますが、いつか鹿児島へ帰ろう、という気持ちはあるのでしょうか?

 

私はまったくないですね。その土地その土地で知り合う人も増えていくし、住みやすい環境を自分で整えるのが得意な方なので。でも、もし帰るとしたらどちらかというと鹿児島市内よりも、幼少期に過ごした奄美大島に帰りたいですね。

 

 

ーーそれはどのような理由でしょうか。環境ですか?

 

環境です。やっぱり自然がすぐ近くにあるので。

本当に実家がもう、山の下なんです。おじいちゃんが泥染め*というのをしてたので、その工房とかもまだあって。いいところだったんですよ。

 

(泥染め*……奄美大島だけでおこなわれている天然の染色方法)

 

 

ーー家の横で野草が採れたり?

 

野草、そうですね。野草というにはもっとこう、力強い植物たちが……シダみたいな。奄美の植物は力強いんですよ。葉が厚くて、緑が濃くて。

 

 

ーー押し花には出来ないかも知れませんね……。

 

でもやっぱり、自然に生えている植物に興味があるので、その環境は面白いですよね。力強い植物の足元にもしかしたら、か弱い、繊細な植物も生えているかも知れませんし。改めて探してみたいですよね。

 

 

ーー奄美の裏庭で、植物探しに没頭する小森さんの姿が、目に浮かびました。

 

そういう生活も想像できます(笑)

 

 

(取材)グンジキナミ
1990年えびの市生まれ。宮崎日本大学高等学校情報デザイン学科卒業。写真家。文筆家。文芸誌「文学と汗」編集長。2020年から横山起朗・玉利空海とともに音楽グループ「nuun」として活動開始。また本屋で長年働いてきた経験を活かし、MRTラジオ「GO! GO! ワイド」内コーナー「GOGO書房 本棚からひとつかみ」にて毎週、本を紹介中。

 

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宮崎で生活するなかで出会った、音楽、文学、美、食を表現する人。
共通しているのは、自分の考え方や、好きなものなどを大切にしながら、
独自のスタイルを持ちながら活動していること。
陽がつたうように皆さんの心に届いたらうれしいです。
今回は、宮崎と、宮崎にご縁のある方の出店です。どうぞお楽しみに!

ー 陽につたう ー

日にち  | 2024年5月11日(土)- 12日(日)
時 間  | 11:00~18:00
場 所  | monne porteギャラリー
住 所  | 〒859-3711 長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2187-4
※波佐見有田ICより車で5分、嬉野ICより車で15分
※駐車場無料

 

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Tatsuro Yokoyama

Piano Solo live

言葉を紡ぐように、物語の情景が浮かぶように、静謐にピアノを弾く横山起朗によるピアノソロライブ。長崎では初めての演奏になります。美しいピアノの旋律に耳を傾けていただけたら幸いです。

日時 | 2024年5月11日(土)
開場 | 18:30~
開演 | 19:30~
場所 | monne porte(長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2187-4)
料金 | 前売り 3500円 / 当日 4000円
ご予約 | Mail.  info@tsutau.net / Tel. 090-3609-6310
※5/11ライブと記載の上、「代表者名、電話番号、人数」をご予約ください。

横山起朗  |  Tatsuro Yokoyama
武蔵野音楽大学を卒業した後、ポーランド国立ショパン音楽大学にてピアノを学ぶ。現在は宮崎、東京、ポーランドを拠点に演奏と作曲活動を行い、CMやテレビ番組等の楽曲提供のみならず、他ジャンルのアーティストと音楽で携わり続ける。

 

 

お問い合わせ先:
つたう(宮崎市宮田町3-34 一文字ビル1階)
info@tsutau.net
Instagram @tsutau_2022

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