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「陽につたう」 IMAGINE インタビュー

何かが勝手に育つとか、それをそのまま戴くとか、人としての原始的な喜びがベースにあって、その喜びから覚めない人生なんだと思います。ずっと。

 

<IMAGINE / 焼き菓子>
店主 トマルメグミ(以下メグさん)。宮崎市丸山、市街地から少し離れた住宅街にて営む小さなカフェ、IMAGINEです。季節を感じ、この地で育ったものを生かしながら、焼き菓子や飲み物を作っています。九州産・宮崎産の小麦、南九州産のバターをベースに、宮崎の太陽で育った季節の果物を中心に、ハーブやスパイスも使いながら、心地よい食べ心地、余韻軽やかな菓子をお届けします。

 

ーー ご自身の料理のルーツって、どこにあると思いますか?

 

もともと父方のほうが農家で、畜産もやってて。実家も土地の半分が畑だったんですよ。

学校から帰ってきたら、畑で父・母が農作業をしてる。例えば苺を植えてたら「あ、赤くなってる、これだ!」って摘んで。里芋やさつまいもを植えてたら、トトロみたいに芋がらの葉を傘にして遊んだりとか。あとはお風呂が薪釜だったので、採った芋をそこで焼いて食べたりとか……畑が遊び場だったんですよね。

それに両親が働いてて、おやつを作るなどの世話をしてくれるような余裕はなかったので、帰ってきたら子供だけでどうにかしておやつを作ってお腹を満たす、みたいな感じだったんです。卵を溶いてみたり、お芋を焼いてみたり、そういうのを遊びながら繰り返して、「あ、これは美味しいね」「ちょっとこれ足りなかったな」とか、そういう経験値がちょっとずつ積み上がってて。

今あるもので、何か美味しいものができると純粋に嬉しいというのが、料理の原体験なのかな。

 

ーー 偶発的にいろんな要素が噛み合って、料理を自ら始めたんですね。。

 

食べ物の循環みたいなのを目の当たりにしながら、その中に「つくる・食べる」があったっていう感じですよね。

どちらかというと、技術を色々身につけないといけない! とかっていうことよりも、もっと実験的に、この食材は焼くのが美味しいのか、焼くにしても焚き火で焼くのがいいのかフライパンで焼くのがいいのか、とか。

そういう、素材そのものに対する興味関心の方が、私は絶対的に強いんです。

 

ーー素材そのものに対する興味を強く抱いているのは、やはり自分の手で収穫したり、自宅に畑があったっていうのがすごく大きいんじゃないでしょうか。

 

うん、大きいです。どれぐらいのサイズ感が一番美味しい状態なのかとか。

だから料理としてじゃなくって、その素材のそのものの味を感じるってところがベースにあるから、それに対する面白さみたいなのはずっと変わらずにあると思う。

だって同じ食材でも作る人や育った場所によって味が違くて、それってすごく面白くないですか? お芋とかも焼いて塩を振っただけなのに、なんでこんな美味しいの、って。

そこに対する驚きとか、感動とか感謝みたいなものって、色褪せないですね。

 

ーー そんな原体験のあった故郷・宮崎県高原町* へ、今思っていることはありますか?

 

(宮崎県高原町* ……宮崎県南西部に位置する。2024年現在の人口はおよそ8,000人。町域の約半分が高原地帯、もう半分が山林で占められている)

刺激を求めて出ていっちゃった自分への後悔や、うしろめたさもある、というのが今の故郷に対する思いですよね。

私はなかなかハードめな10代を過ごしていて、自分のことを認めてあげたいとか、好きでありたいと思いながらもそれができない葛藤が、田舎で暮らしてた時期にどうしてもありました。早くここを出たいって。自分が持っているものが変えられないんだとしたら環境を変えるしかない、だとしたら私は一刻も早くこの場所を出なきゃいけない……と当時は思ってたんですよね。

 

でもやっぱりそこで無意識に吸収していたものが今に繋がってるって、すごく思うので。あの時に吸っていた空気、特に自然に対する思いとか関係性みたいなものは、自分の中では大きかったんだなって。故郷の存在感が今、大人になってより感じられるといるのはあります。大人にならないと育った場所のよさってわかんないって、よく言いますけど、本当にそうだなと思いつつ。

でも、何かを好きになるためには「主体的にその場所に対して向き合わないと好きになれない」し、そこを理解したり根を張ることはできないというか。

これは、東京に住んでた時もすごい思ってたんですよ。

ーー 何年ぐらい住まれていたんですか?

 

大学で群馬に4年いて、そのあと東京と横浜で7年ぐらい住んでたのかな。

東京じゃないと見られないもの、知り合うことができない人ってたくさんいたから、それは良かったと思いながらも、自分が暮らしているその場所に対して根が生えないなって思ってたんです。ただ、働きに出る場所、お金を得る場所、お金を消費する場所、だったみたいで。

 

そのあと、宮崎に帰ってきて会社勤めして子育てもしながら、どうしたら自分がこの場所と繋がれるんだろう? って悶々と考えている中で、たまたま人のご縁で「やってみる?」「作ったものをイベントで出してみる?」って声を掛けていただいたのがスタートで、今の仕事につながってるんです。

自営業を選択したから、いろんな責任とかリスクとかは自分で背負い込まなければいけないんだけども、得るものがやっぱりすごく大きくて。この場所に根が生えてきた実感は、少し今、あるかもしれないです。

 

ーー 「IMAGINE」というお店の名前について伺いたいのですが。

 

「IMAGINE」っていうとジョン・レノンを浮かべる人もいると思うんですが、私はどちらかというとオノ・ヨーコさんの方に影響を受けてるかも知れません。

とまぁそれもありつつなんですが、私は循環の中のいい一部でありたいんですよね。循環の中のいい存在でありたい。

「この人がやってることをサポートしたい」って思う人のものを買いたいし、それを自分が届けられる人にちゃんと届けたい。受け取った人がまたそれで何かを得て、元気に過ごしてもらえたらいいなと思うし。それが屋号のひとつの理由で。

街の豊かさを彩る一部として、自分が何ができるんだろうということを、いつも忘れないでいたい。そういう大きなものの一部であるってことをちゃんとイメージしながら生きていたいな、仕事してたいなと。

 

そして、自分の暮らしと仕事を一つにしたいなと思って今、やっています。

暮らしと仕事の良い存在でありたい。大きな集合体の中で、どうしたらよりよい存在であれるかということを忘れないでいたい。屋号の「IMAGINE」は多分、そんな自分に対する思いですね。

 

ーー すべてに対して想像力、イメージするということが欠かせないから、そのテーマを名前にした。すごくいい名前ですね。

 

ありがとうございます。自分に課した命題みたいなものですね。

ひとつひとつ、何を買うかがどういう影響を与えるんだろう、何の犠牲の上に成り立っているんだろう、みたいなことをすごく意識していたんですよ。

それは音楽が好きだったからっていうのもひとつあるんですよね。やっぱりミュージシャンは環境問題や社会問題をすごく意識されてる方が多いから、そこから発せられるメッセージを受け取ることが多かった。

あとはやっぱり幼少期の影響もあると思います。自然の中で育ってきた、育てられてきたっていうのが、そういうことに対して自分がやってることがどういう影響があるんだろうってことって、生い立ちとしてどうしても意識せざるを得なかったんじゃないかな。

 

ーー それに想像しちゃいますよね。目の前に並んでる野菜とかは、必ず土の中で種から育って芽吹いて、実ったんだというのを。

 

私、なんか何かが勝手に育つとか、それをそのまま戴くとか、人としての原始的な喜びがベースにあって、その喜びから覚めない人生なんだと思います。ずっと。

 

ーー 今回は、メグさんの根源が知れてよかったです。人それぞれあるじゃないですか、理念みたいなものが。メグさんの場合は方法論ではなく、哲学なんだなって思いました。

 

はい。変えられない自分というか。

 

 

ーー 心が伴わないことをしたくないってことですよね。

 

そうです。その通り。

 

ーー すばらしいと思います。

 

(取材)グンジキナミ
1990年えびの市生まれ。宮崎日本大学高等学校情報デザイン学科卒業。写真家。文筆家。文芸誌「文学と汗」編集長。2020年から横山起朗・玉利空海とともに音楽グループ「nuun」として活動開始。また本屋で長年働いてきた経験を活かし、MRTラジオ「GO! GO! ワイド」内コーナー「GOGO書房 本棚からひとつかみ」にて毎週、本を紹介中。

 

 

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ー 陽につたう ー
日にち  | 2024年5月11日(土)- 12日(日)
時 間  | 11:00~18:00
場 所  | monne porteギャラリー
住 所  | 〒859-3711 長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2187-4
※波佐見有田ICより車で5分、嬉野ICより車で15分
※駐車場無料

宮崎で生活するなかで出会った、音楽、文学、美、食を表現する人。
共通しているのは、自分の考え方や、好きなものなどを大切にしながら、
独自のスタイルを持ちながら活動していること。
陽がつたうように皆さんの心に届いたらうれしいです。
今回は、宮崎と、宮崎にご縁のある方の出店です。どうぞお楽しみに!

押し花 小森(押し花・宮崎)
大阪と鹿児島、宮崎の生花店での経験を経て転向。
押し花にした植物の姿に虜になり、一輪・一種の美しさを活かした作品を制作しています。

nagi label + 文学と汗(CDと文芸誌・宮崎)
「音楽と共に平穏を届ける」をコンセプトに音楽制作、ライブ企画などを手がけるnagi labelと、「他人事ではない文学」をテーマに文学誌を編む文学と汗。共に宮崎を拠点にする二組による出展です。はじめての地、波佐見にて宮崎に縁のある作家達の作品に触れていただけたら嬉しいです。

IMAGINE(焼き菓子・宮崎)
宮崎市丸山、市街地から少し離れた住宅街にて営む小さなカフェ、IMAGINEです。季節を感じ、この地で育ったものを生かしながら、焼き菓子や飲み物を作っています。九州産・宮崎産の小麦、南九州産のバターをベースに、宮崎の太陽で育った季節の果物を中心に、ハーブやスパイスも使いながら、心地よい食べ心地、余韻軽やかな菓子をお届けします。

恋史郎コーヒー(コーヒー・宮崎)
宮崎市にある小さな自家焙煎珈琲店です。「コーヒーが果実であることを日常に」をテーマに、スペシャリティコーヒーの本質を知ってもらいたいという想いから、浅煎りを中心に澄んだ中に個性あふれるコーヒーを提案しています。

竹田かたつむり農園(食品・長崎)
長崎県雲仙市で、在来種や固定種の野菜やお米を育てています。育てた野菜から種を採り、その採った種からまた野菜を栽培する種どり農家です。かたつむりの渦のよう衣食住が循環する農園を目指してゆっくり進んでいます。

たねのわ搾油所(食用油・宮崎)
長崎県の平戸にて伝統的な手作り植物油を生産しているたねのわ搾油所。薪を燃料にして材料を焙煎し、古い機械で油を搾る日本伝統の油作を継承している生産者は全国的にも数少ない。長野県育ちのオットと、宮崎県育ちのツマが作る和のオイルの古くて新しい展開をお楽しみください。

つたう(企画・長崎)
宮崎市の楠並木通り近くでギャラリーショップを営む「つたう」と申します。生活のなかで、あなたの心に伝わるような心に留めておきたい器や衣類、モノゴトなどを紹介しています。
合同展「陽につたう」に合わせて、横山起朗さんのピアノソロライブも開催します。
宮崎の陽を感じてもらえたらうれしいです。

 

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Tatsuro Yokoyama

Piano Solo live

言葉を紡ぐように、物語の情景が浮かぶように、静謐にピアノを弾く横山起朗によるピアノソロライブ。長崎では初めての演奏になります。美しいピアノの旋律に耳を傾けていただけたら幸いです。

日時 | 2024年5月11日(土)
開場 | 18:30~
開演 | 19:30~
場所 | monne porte(長崎県東彼杵郡波佐見町井石郷2187-4)
料金 | 前売り 3500円 / 当日 4000円
ご予約 | Mail.  info@tsutau.net / Tel. 090-3609-6310
※5/11ライブと記載の上、「代表者名、電話番号、人数」をご予約ください。

横山起朗  |  Tatsuro Yokoyama
武蔵野音楽大学を卒業した後、ポーランド国立ショパン音楽大学にてピアノを学ぶ。現在は宮崎、東京、ポーランドを拠点に演奏と作曲活動を行い、CMやテレビ番組等の楽曲提供のみならず、他ジャンルのアーティストと音楽で携わり続ける。

 

 

お問い合わせ先:
つたう(宮崎市宮田町3-34 一文字ビル1階)
info@tsutau.net
Instagram @tsutau_2022

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